遺産分割を進める際には、いくつか押さえておくべき事項があります。どのくらいの割合で遺産を分ければ良いのか、法定相続割合を無視して良いのか、連絡を取りにくい相続人がいる場合、意見が合わない場合にどうすれば良いのかなど、相続人の方が迷ってしまうケースが少なくありません。
以下では遺産分割に際して押さえておきたい知識を弁護士の視点から解説していきます。
1.遺産分割協議は「全員一致」が必要
遺産分割協議では、全員の意見が一致する必要があります。多数決では決められません。1人でも反対する人がいたら協議が成立しません。
2.遺産分割は、基本的に「法定相続分」に従って進める
遺産分割は、基本的に相続人が法定相続分通りに遺産を取得する方向で進めましょう。それがもっとも公平でトラブルになりにくいからです。
法定相続分は、以下の通りです。
- 配偶者と子どもが相続人…配偶者が2分の1、子どもが2分の1
- 配偶者と親が相続人…配偶者が3分の2、親が3分の1
- 配偶者と兄弟姉妹が相続人…配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1
- 複数の子ども、兄弟、親が相続人…頭数で均等に分ける
3.相続人全員の合意があれば法定相続分を無視してかまわない
遺産分割の方法は、必ず法定相続分通りにしないといけないわけではありません。相続人が全員納得すれば、法定相続分を無視した割合にすることも可能です。たとえば長男がすべての遺産を引き継ぐ内容なども有効です。
ただし1人でも反対すれば、そういった取り決めはできません。
4.連絡を取りにくい相続人がいる場合
連絡を取りにくい相続人がいても、その人を除いて遺産分割をすることはできません。どうしても出てこない場合には、家庭裁判所で「遺産分割調停」を申し立てて裁判所で話し合いをせざるを得ないでしょう。
なお、完全に行方不明の場合には「不在者財産管理人」などを選任しなければならない可能性もあります(民法25条)。
また、相続人の中で、認知症や障害などによって物事を判断する能力を欠く常況にある人がいる場合には、「成年後見人」を選任しなければならないこともあります(民法7条)。
5.相続人同士の意見が合わない場合
遺産分割協議を行っても相続人同士の意見が一致しない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。管轄裁判所は、相手方のうちの一人の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所です。遺産分割調停で、どうしても話し合いができなかったり、折り合いがつかないなど、調停での解決が困難な状況に至った場合、家庭裁判所は引き続き事件を審判手続に移し、法律に従って裁判所としての判断を示すことになります。
相続人があらかじめ正しい知識を持っていれば、遺産分割協議を比較的スムーズに進められるものです。迷われた際には、トラブルになる前に弁護士までご相談下さい。