遺言書を作成するときには「遺言執行者」を選任しておくといろいろなメリットを受けられます。
遺言執行者とはどのような役割を負った人なのか、選任するメリットや選任方法などについて、弁護士が解説していきます。
1.遺言執行者とは
遺言執行者とは、遺言書で指定されている内容を具体化する人です。
たとえば「不動産を長男に相続させる」と書いてある場合、遺言執行者が不動産の相続登記を行います。預貯金の払い戻しや相続人への分配、法人等への寄付などの財産的行為だけではなく、子どもの認知などの身分行為もできます(民法1012条、戸籍法64条)。
子どもの認知や相続人の廃除・取消などの行為は相続人にはできないので、遺言執行者がいないと実現不可能です(戸籍法64条、民法893条)。
2.遺言執行者を選任するメリット
遺言執行者を選任しておくと、以下のようなメリットがあります。
2-1.遺言内容を確実に実現しやすくなる
遺言執行者を定めない場合、遺言内容の実現は相続人や受遺者に任されます。これらの人が手続きをしなければ、いつまでも相続登記が行われずに放置される可能性がありますし、指定した寄付が行われないケースなどもあります。
遺言執行者を定めておけば、相続登記や寄付などの相続手続きを遺言執行者が行うので安心です。
2-2.相続人たちに手間をかけないで済む
相続手続きは、相続人たちにとって手間になるものです。特に相続人が現役世代の場合、忙しくて相続登記などを行う時間をなかなかとれない場合もあるでしょう。
遺言執行者を定めておけば、必要な手続きは遺言執行者が行うので、相続人たちに手間をかけさせずに済みます。
2-3.相続人が協力しなくても不動産の相続登記できる
相続人以外の人に不動産を遺贈する場合には、登記権利者たる受遺者と登記義務者たる相続人全員の共同申請になるため、相続人全員の協力がないと不動産の名義変更ができません。
相続人全員が協力してくれない場合には、家庭裁判所に遺言執行者選任を申し立てざるを得ません(民法1010条)。
遺言執行者を選任しておくと、登記権利者たる受遺者と登記義務者たる遺言執行者の共同申請で登記できるので、受遺者の権利が実現されやすくなります。
さらに、遺言書の中で、財産をもらう受遺者自身が遺言執行者に指名されている場合は、登記権利者たる受遺者及び登記義務者たる遺言執行者として1人で登記の申請が可能です。
3.遺言執行者の選任方法
遺言執行者の選任方法として、以下の3通りがあります。
- 被相続人が遺言によって直接指定する(民法1006条)。
- 被相続人が遺言によって「遺言執行者を選任すべき人」を指定し、相続発生後に指定された人が遺言執行者を選任する(民法1006条)
- 相続開始後に、相続人や受遺者が家庭裁判所へ申立てをして遺言執行者を選任してもらう(民法1010条)。
遺言執行者に就任できる人の範囲には特に制限がなく、未成年者や破産者以外であれば選任可能です(民法1009条)。受遺者や相続人を遺言執行者とすることも認められますが、そうすると他の相続人から反発されることもあります。そのようなトラブルが想定される事案では、公正中立な立場である弁護士などの専門家を立てておくのが無難といえるでしょう。
当事務所では、遺言書作成サポートに積極的に取り組んでいます。遺言執行者についてのアドバイスや就任も承りますので、お気軽にお問い合わせください。