病気などにかかり、子どもを残して死亡してしまう場合、後に残される子どもが心配です。配偶者がいる場合であれば配偶者が親権者となって子供の面倒を見てくれるでしょうけれど、死別や離婚によって既に配偶者もいなければ、誰も子どもの権利を守ってくれる人がいなくなってしまいます。
そのようなときには、未成年後見人を選任し、親権者の代わりに子どもの財産管理や身上監護を任せる必要があります。
今回は、未成年後見人の選任方法を解説していきます。
1.遺言によって未成年後見人を指定する方法
親権者は、自分が死亡した後の子どもの未成年後見人を「遺言」によって指定できます(民法389条)。
遺言というと、財産の分け方などを指定するものというイメージが強いかも知れませんが、未成年後見人を指定することも可能です。
遺言によって未成年後見人と指定された人は、後見人への就任を拒否することが認められます。
就任するならば死亡後10日以内に未成年者の市区町村役場に届出をする必要があります(戸籍法81条1項)。
届出の際には、未成年者と未成年後見人のそれぞれの戸籍謄本や遺言書が必要となります。遺言書が「自筆証書遺言」または「秘密証書遺言」の場合には、事前に家庭裁判所で「検認」という手続きを受けて、検認済証明書をつけてもらわねばなりません。
遺言によって未成年後見人を指定する場合、こういった手続きが必要なことを事前に未成年後見人候補者に説明しておくべきです。
2.家庭裁判所に選任の申立をする方法
未成年者が一人残されるとき、元の親権者が必ずしも遺言によって未成年後見人を指定しているとは限りません。
その場合には、未成年者本人や親族などが家庭裁判所で「未成年後見人選任の申立」をすることができます(民法840条)。
未成年後見人選任申立の家庭裁判所の管轄は、「未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所」です。未成年者と後見人候補者の戸籍謄本、住民票等の必要書類を集めて提出すれば、申立の手続きができます。費用としては800円の収入印紙と連絡用の郵便切手数千円分がかかります。
申立の際、未成年後見人の候補者を立てることも可能です。多くの場合、親の祖父母や兄弟姉妹などの親族を候補者とします。
申立をすると、家庭裁判所で未成年者や申立人の面談が行われ、詳しい事情を聞かれます。親族がいる場合には意向の確認も行われます。
その後、裁判所で未成年後見人選任の審判があり、その後は選任された未成年後見人が未成年者の財産管理や身上監護を行っていきます。
未成年後見人の候補者を立てても、親族間に争いがある場合や未成年者名義の多額の財産がある場合などには弁護士や司法書士などの専門職から後見人が選任される可能性があります。
未成年後見制度についてご不明な点がありましたら弁護士がアドバイスをいたします。遺言書作成や未成年後見人選任申立のサポートも行いますので、お気軽にご相談下さい。