相続財産調査は遺産相続の手続きにおいて非常に重要な位置づけです。調査によって把握すべき財産は、預貯金や現金、不動産や自動車、株式や投資信託、ゴルフ会員権や保険関係など多岐に及びます。
今回は相続財産調査の必要性と調査によって把握すべき財産について、弁護士が解説していきます。
1.相続財産調査が必要な理由
1-1.遺産分割協議の前提
遺産相続したら、相続人が全員参加して遺産分割協議を行うものです。遺産分割協議をしないと誰がどの遺産を受け継ぐのか確定しないので、不動産の名義変更なども進められません。
遺産分割協議を行うには相続財産が明らかになっている必要があります。どのような遺産があるのかわからないと、分割の前提が欠けるからです。
相続財産調査は遺産分割協議の前提となるので必ずやらなければなりません。
1-2.相続放棄するかどうかの判断基準
被相続人が借金をはじめとする負債を残している場合、相続人は「相続放棄」あるいは「限定承認」をしないと負債を引き継いでしまいます。相続放棄や限定承認は、基本的に「自己のために相続開始を知ってから3か月以内」(民法915条)に行う必要があります。
その間何もせず借金の存在を把握する努力もせずに放置していると、3か月が経過して自動的に単純承認となってしまい、借金を相続せざるを得なくなるリスクが高くなります。
負債を相続しないための相続放棄をすべきかどうか適切に判断するためにも、相続財産調査が必要です。
2.調査によって把握すべき財産と調べ方
2-1.現金や動産類
現金は自宅のタンスや引き出しなどにしまわれているケースがよくあるので、きっちり調べましょう。金庫や床下、金融機関の貸金庫に入っている例もあります。
2-2.預貯金
自宅に預貯金の通帳やカードなどが保管されている例があります。各金融機関に問い合わせて、相続開始時の残高証明書や取引履歴を発行してもらいましょう。
2-3.株式や有価証券、投資信託など
証券会社に株式などの有価証券類を預けていないか問い合わせます。どこの証券会社と取引していたか調べる必要があるので、証券会社から届いている通知やカード、携帯アプリなどを見てチェックしましょう。
2-4.保険関係
被相続人が保険に入っていた場合、自宅に保険証書や保険会社から届いた書類が保管されているものです。詳細がわからなければ保険会社に問い合わせましょう。
2-5.自動車
自動車については車検証を確認し、業者に査定依頼をしてどのくらいの価値があるかみてもらいましょう。
2-6.不動産
不動産については法務局で登記簿(全部事項証明書)や役所で固定資産評価証明書を取得して詳細を確認します。不動産会社に査定書を出してもらうとだいたいの価値を把握できます。どういった不動産があるかわからない場合、役所で固定資産課税台帳を開示してもらいましょう。
2-7.負債
自宅で金銭消費貸借契約書や税務署、市役所からの通知書(納税を督促するもの)、大家からの通知書などが見つかるケースがあります。また、預貯金通帳や取引履歴などを確認すると、口座からの引落等で負債が発覚するケースもあります。サラ金などの利用については、JICC(株式会社日本信用情報機構)、CIC(株式会社シー・アイ・シー)、全国銀行個人信用情報センター(一般社団法人全国銀行協会)の各信用情報機関に照会することによって知ることができます。
慣れない方が相続財産調査を行うのは大変です。弁護士に任せれば的確かつスピーディに進められますので、お困りの際にはお気軽にご相談下さい。