「遺言書」というと財産の分け方について定められるイメージが強いものですが、実はそれ以外の効果もたくさん持っています。
以下では遺言書によって定められる主な事項をご紹介していきます。
1.相続分や遺産分割方法の指定
遺言書により、それぞれの相続人の相続割合や具体的な遺産分割方法を指定できます。たとえば「長男に2分の1、次男に4分の1、三男に4分の1の遺産を相続させる」としたり「長男に〇〇の不動産を相続させる」などして個別の遺産を遺贈したりできます。
2.相続人以外の人への遺贈
内縁の妻やお世話になった人など、相続人でない人に遺産を残せます。
3.法人などへの寄付
会社や団体などに財産を寄付することも可能です。
4.遺産分割の禁止
5年を超えない範囲で、死後の一定期間に遺産分割を禁止することができます。相続人の中に近々成人する子どもがいるケースなどでよく利用される制度です(民法908条)。
5.特別受益持ち戻し計算の免除
相続人の中に特別受益を受けたものがいると、相続の際に「特別受益の持ち戻し計算」が行われて受益者の相続分を減らされる可能性があります。このことが原因で相続トラブルが発生するケースも少なくありません。
こうしたトラブルを防ぐため、遺言によって特別受益の持ち戻し計算を免除することができます(民法903条2項)。
6.遺留分請求の順番を指定
遺留分請求の対象となる複数の贈与がある場合、どの順番で遺留分請求を行うべきか遺言によって指定できます(民法1047条1項2号但書)。こうした工夫により、遺留分トラブルが起こる可能性を低下させられます。
7.子どもの認知
生前に子どもを認知するとトラブルになりそうな場合など、遺言による認知が可能です(民法781条2項)。
8.未成年後見人や未成年後見監督人の指定
未成年の子どもを残して死亡する場合には、未成年後見人や未成年貢献監督人を遺言によって指定できます(民法839条1項、848条)。
9.相続人の廃除やその取消
相続人に非行があったため相続資格を奪いたい場合、遺言によって廃除できます(民法893条)。すでに廃除していた場合、その取消も可能です(894条2項・民法893条)。
10.遺言執行者の選任、遺言執行者を選任すべき人の指定
遺言によって遺言執行者本人や、遺言執行者を選任すべき人を指定できます(民法1006条1項)。
11.遺産の信託
特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の遺言をすることが可能です(信託法3条1号)。
12.祭祀承継者の指定
仏壇や仏具、お墓などの先祖をまつるための財産を承継する「祭祀承継者」を遺言によって指定できます(民法897条1項但書)。
遺言には、「財産承継の方法を指定する」以外にもいろいろな効果が認められます。遺言を使ってできることとできないことの区別を知りたい場合、「こんなことは実現できるのか?」と気になっておられる場合など、お気軽に弁護士までご相談下さい。