相続人同士で話し合いを行い、ようやく遺産分割協議が成立したと思ったところに「遺言書」が見つかるケースがあるものです。
遺産分割協議成立後に遺言書が出てきたら、遺産分割協議のやり直しが必要になるのでしょうか?
実はこの場合、やり直しが必要なケースと不要なケースがあります。
今回は、遺産分割協議成立後に遺言書が出てきた場合の対処方法を解説します。
1.遺産分割協議のやり直しが必要なケース
以下のようなケースでは、遺言書が見つかったことによって遺産分割のやり直しが必要です。
1-1.遺言書の内容通りに遺産を分けたいと主張する相続人がいる
遺言書の内容を見たとき、誰か1人でも「遺言書どおりに遺産相続をしたい」と希望すれば、その通りに相続手続きをやり直す必要があります。
1-2.遺言書を知らなかったことが「錯誤」と主張する相続人がいる
遺言書の存在を知らずに遺産分割協議を成立させてしまったことは「錯誤」による法律行為と考えられます。そこで、「遺産分割協議は錯誤によって無効になる」と主張する相続人がいたら、遺言書通りに相続手続きを行う必要があります。
1-3.法定相続人以外の受遺者が指定されている
「法定相続人以外の人へ遺贈する」と書かれている場合、相続人以外の利害関係者がいるので、相続人が全員納得していても遺言書を無視できません。遺言書通りに受遺者へ遺産を渡す必要があります。
1-4.相続人が廃除されている、廃除を撤回されている
遺言書によって相続人が廃除されていたり、既に行われた廃除が撤回されていたりすると、相続権を持つ人の範囲が変わってしまいます。そこで正しいメンバーによって遺産分割協議をやり直す必要があります。
1-5.遺言執行者が追認しない
遺言書によって遺言執行者が指定されており、その遺言執行者が遺産分割協議の内容を承諾しないケースでは、遺産分割協議が有効になりません。遺言書に従って相続手続きを進める必要があります。
2.遺産分割協議のやり直しが不要なケース
遺言書が見つかっても、相続人全員が「以前に自分たちで合意したとおりに遺産相続してかまわない」と納得するのであれば、遺言書を無視してそのまま遺産相続を進めてかまいません。相続人が納得すれば、必ず遺言書に従わねばならないわけではないのです。
ただし上記の通り、相続人以外の受遺者がいたら相続人だけでは合意できません。また遺言書によって相続人の廃除や取消もされておらず、遺言執行者も指定されていないか事後承諾している必要があります。
遺産分割協議の成立後に遺言書が発見されたら、どのように対応して良いかわからず迷ってしまうのも当然です。トラブルのもとになるケースもよくあります。お困りの際にはお早めに弁護士までご相談下さい。